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「伝統美」と「環境」を追求した家

【陶芸作品を引き立てる木目美しい自然木の棚】

筑前小石原焼の壺や皿がズラリ並ぶのは、リビングにある自然木のカウンターや棚。その材は、御山杉、ケヤキ、高野槙などの木目が美しい銘木で、建て主のH様により収集された陶芸作品を引き立てています。

H様が、お母様と住まう古いご自宅の建て直しを、私たちにご依頼されたのは、当社で新築された陶芸仲間のご友人の紹介から。美術作品に求められるよう細やかなご要望があり、基本プランから設計まで時間をかけ、綿密な打ち合わせを行いました。テーマは、渋谷区の住宅街という都心に「昔ながらの家を創る」こと。

日本の住文化が蓄積し、連綿と伝え洗練してきた「美」を、今に蘇らせるというプランを、大工が完全に施工し形にすることは、とても困難でしたが、やりがいがありました。

【「蔵」をイメージした外観と「木の展示場」の内観】

正面壁は漆喰仕上げで、心豊かな暮らしを思い起こさせる「蔵」をイメージ。屋根は入母屋造りで、いぶし瓦が輝きます。腰壁は、瓦の佇まいに気品を添える、昔ながらの杉の下見板貼り。外観そのものが、都心の街並みに伝統的な建物の風格を漂わせます。

室内も工夫をこらしました。「天井は高め」と要望されたことから、通常は柱の長さ3mのところを3.6m加工して立て、圧迫感のない開放的なリビングとなりました。構造材には多くは杉が使用されますが、柱・梁ともに、耐久性・耐水性の優れた桧を使用。大黒柱は、当社所要の栃木の山で、H様立ち合いの元に伐採された杉の丸太で、思い出深いもの。床柱には、天然の絞り丸太ほか、屋久杉、イチョウ、槙などで彩りました。まさに、選りすぐりの国産木材の展示場のよう。国産の多種多様な自然木を大量にストックしている、当社だからできること。

細部まで「美」にこだわります。襖の引き手には刀の鍔を、建具のガラスには伝統工芸士作られた江戸切子、壁には漆喰仕上げと和紙貼りといった具合。

【中庭を設け、風通し良く、日射しを温かに受ける家に】

「昔ながらの家」が大切にしたもう一つは「環境」です。

敷地は、京町家のような縦長の形状。そこで中庭に空庭を設け、1階居間と2階の通風と採光を確保しました。空調に頼らない、風通しの良い、太陽の熱をいっぱいに受ける家となりました。日本の温暖化する環境を考えれば、石油・電気・ガスなどのエネルギーを極力使わないことが、なにより大切です。

素材は、見える部分、見えない部分に限らず、すべて自然素材、国産材を使用。海外の遠い豊かな森を乱伐して木を得る「環境破壊型」でなく、国内の伐るべき木を利用して林業を盛りたてる「環境共生型」の家づくりを私たちは目指しています。それには、接着剤に頼らず、伝統的墨付け、手刻みなど、職人たちの手による心のこもった仕事が絶対に必要なのです。「美」と「環境」を追求したH邸は、自然と一体となれる、呼吸の楽な家になりました。

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